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ふたつの家族の家

市街化調整区域に建つ二世帯住宅。
耕作地に囲まれ、自然環境の恩恵を受けやすい立地だったため、
積極的にパッシブデザインの設計手法を取り入れた。
外観にもあえて木材を使用するなど、景観に溶け込むような佇まいを心がけた。
二世帯住宅とはいえ、単純に階層ごとに世帯を分けるのではなく、
2階に多目的に使用できる大らかな空間をつくるなど、
専用と共用を織り交ぜることで日常的に円滑なコミュニケーションが図れるよう工夫した。
主に親世帯が暮らす1階は、緩やかに空間を連続させることで光や空気が行き渡るよう配慮。
耐震性能、温熱性能については、最高等級を確保し、
さらに全館空調システムを導入することで、夏と冬の温熱環境を快適なものとしている。

リビングからダイニング・キッチン、玄関ホールを見る。建具の高さを天井でと揃えることで、空間の連続性を演出。家を“ひと続き”にしている。建具が引き込まれると柱と壁が残り、融通無碍な趣の空間となる。

大きな開口のあるリビング。パッシブエリア(太陽熱の影響を考慮したスペース)の開口部は、太陽の熱と光を存分に取り入れるために、断熱性能の高いサッシを採用。天井からの下がり壁がなく、熱や光、空気は、淀みなく動きやすい空間となる。

リビング・ダイニングには、杉の床板と紙クロスに石灰塗料の塗り壁を採用。平面的な開口部でも、柱や壁、障子があることで、光の質が変化し、“ひと続き”の空間にも場所性を付与し、日常の小さな幸せを感じさせてくれる。

和室(両親の寝室)。壁と天井は土佐和紙仕上げ。重ねの部分は、耳裁ち(端を切る事)せず、経師の仕事のように丁寧に仕上げた。素材をデリケートに扱うことで、同じ材料でも空間の質は上質なものとなる。障子の組子の割付は、大壁の和室らしいざっくりとした印象にして、庭の新緑が優しく映える和室となった。

リビング。石灰の白を基調とした仕上げの中、目の休まる場所として杉の板を張った。木を効果的に生かすことで光の反射を和らげる効果がある。天井までの障子は、大きな開口部を通したバッファーゾーン(熱環境を調節する緩衝場所・この家では室内干しスペースを兼ねている)からの熱の出入りを調節するだけでなく、光の質や量もコントロールする。柔らかな光で満たされた、上質な雰囲気のリビングになった。

LDKの夜景。できるだけ少ない光の量で過ごせるよう、照明を分散配置した。全て点灯すれば十分に明るい部屋となる一方、光量を減らせば、全体が落ち着いた印象となり、リラックスして寛ぐことが可能となる。

2階の多目的空間。機能や用途に縛られない大らかな空間を意図した。天井は高いところで3m80㎝ほどあるものの、化粧の大梁が高さを規定しているおかげで腰高にならず、落ち着いた印象となっている。梁下の障子は、矩の手に引いてくると建具同士で召し合わされ、まるで行燈の中にいるような柔らかな光に包まれた空間となる(障子の高さは2m25㎝)。木製の縦格子の向こう側は小屋裏空間になっており、全館空調のエアコンが設置されている。

夜景。温かな光に溢れる室内は、豊かで幸福な家族の暮らしを象徴するもの。住まいからこぼれる温かな光は、その温もりを周囲にも与え、周辺の環境を良くすることにも貢献することとなる。